審査講評(和歌山大学教授 本多 友常) 赤松の群生する緩傾斜地を想定し、樹木の位置、斜面の変化、住宅内で行われる行為など、様々な空間の成立要因を重ね合わせていくことにより生み出された住宅が、周辺環境によく馴染んだ空間を生み出している。 あくまでも周辺の条件に追随し、設計者の造形的な意図を排除していくという方法論は、作品主義により生み出されるシンボリズムを否定しつつも、新たな恣意性を滑り込ませている点で、巧妙な二重性として成立している。 木造の特徴については、自由な壁面構成を造り易い素材として使用しているのみであるが、明快なコンセプトと洗練された表現力がこれを十分に上回り、魅力溢れる住環境が、環境の総体として描き出されている。